ロシアンルーレットⅡ【ｺﾐｶﾙｱｸｼｮﾝ】
　この男に適うはずがないのだ、それを龍一は重々承知していたはずである。


　どうして今更、このような無駄な足掻きをしようなどと考えたのか。


　龍一は思わず苦笑を漏らした。


　と、木戸が多恵目掛けて歩き出した。


「よせ！」


　龍一がそれを追うと、木戸は振り向きざま左腕を後方へと地と水平に龍一目掛けて振る。


　それをくぐるようにしてかわして木戸の正面に移動し、龍一は木戸の腹部に左拳を捻じ込んだ。


　前屈みになった木戸の後頭部に、銃を持った右腕を振り下ろす。


　が、木戸が左腕を上げてそれを受け止め、今度は木戸の右拳が龍一の左側頭を狙った。


　龍一は反射的に上体を後方へ倒すも、かわしきれず、左頬を弾き飛ばされた。


　両足を踏ん張り、龍一はなんとか立位を保ったが、ちょうどそこへ、ようやく戻ったアツシも加わり、富樫と共に龍一を両側から抱え込んだ。


　木戸は何事も無かったかのように、再び多恵の元へと向かうと、怯えて後ずさる多恵の胸ぐらを掴み、その頬を平手で殴り飛ばした。


　その衝撃で床に倒れた多恵の後ろ襟を掴んで、木戸は多恵を力ずくで再び立たせると、引きずる様にして部屋を出た。




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