ロシアンルーレットⅡ【ｺﾐｶﾙｱｸｼｮﾝ】

「暴れん坊の口は健在か。」


　木戸が安心したというように、笑みをこぼす。


「どうしてよ？　どうしてこんなこと…　目的は何なの？　私のせいであの人まで…」


　怒りと悔しさで、多恵の目に涙が滲んだ。


「お前のせいじゃない。巻き込まれてるのは、お前の方だ。」


「どういうこと？」


　不意に聞かされた真実に、多恵は目を丸くした。


「お前は何も知らなくていい。いや、むしろ知らない方がいい。全て片付いたら二人とも無事帰れるんだ、心配するな。」


「そんなの嘘よ！　じゃあ、じゃあ、あの人は…　私を助けるために、死を覚悟でここへ来た、そうでしょ？　あの人なら、こんなとこきっと簡単に脱出できるもの。そうしないのは、私がいるから…　私が殺されないために、黙って何もせずここにいる…!?」


　多恵の目からとうとう涙が溢れ出て、それは止め処なく頬を濡らし続ける。


「何も考えるな。お前だけは必ず、旦那と子供の元へ帰してやる。」


　木戸は多恵をそっと引き寄せ、胸に抱いた。


　そうして優しく背中をさすってやる。