“おさななじみ”に恋をする。下【上下完結】
「や…の…さん?
あ――!!
やっぱり!!
矢野さんだよねっ?」


ズケズケっとした
妙に耳障りな声がして。


…この声どっかで…


そう思って顔を覆っていた両手を下ろしたあたしの前に、赤いメガネをかけたボブの女の子と凌が立っていた。


「どんよりした顔で俯いちゃってさ。
ほんと、生気が感じられないくらい暗い顔して歩いてくるんだもん。
近くにくるまで、矢野さんだって確信が持てなくてさ。
あーよかった。
本人で」


アハハ…っと快活に笑う、赤いメガネをかけたボブの女の子の横。


凌が、あたしの存在なんて目にも入っていないという様子で、スッと通り抜けた。
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