空に叫ぶ愛
家の扉を雑に開けると玄関にある靴を見る。


愛の靴は……ない。


確認したあと扉を閉めて再び走りだす。


どこに行ったんだ?


愛が行きそうなところを焦る頭で考える。
ハッと思いついた場所。


もしかしたら…!


そう走って向かう場所は、川。
愛と再会した後に行ったあの川だ。


ミンミン蝉が鳴く。
森に囲まれた川の大きな石の上に座る影。


ゆっくり、その影に近づく。



「愛」



そう呼ぶと顔を上げる弱い君。

大きな瞳が涙で揺れている。


その弱々しい姿を見て〝壊れるぐらい抱き締めたい〟と思った。


愛しさが溢れる。


その想いに限界なんてない。
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