空に叫ぶ愛
二人は黙って廊下を歩く。しかし、若菜がそんな沈黙を破った。
「愛ちゃん、さっきは本当にありがとうね」
「別に。いじめとか許せないだけ」
本当に。心の底から。
いじめは許せない。
だって、いじめは生き地獄。
「初めてやった…」
若菜が立ち止まったから私も同じように立ち止まって若菜を見る。
若菜はウルウルした瞳で言葉をつづけた。
「誰も助けてくれんかった…初めて愛ちゃんが手を差しのべてくれた…」
彼女の震えた声がいじめの深刻さをリアルに感じさせる。
辛かったでしょう…?
苦しかったでしょう…?
私は若菜の手を握った。強く。強く。
いじめの辛さがわかるからこそ、彼女がずっと欲しがった言葉がわかる。
私もずっと欲しかった。
「独りじゃないよ」
若菜の瞳から綺麗な涙がひとつ、またひとつと頬を伝う。
こんなに綺麗な涙を流すことができる若菜を傷つけるなんて。
「愛ちゃん……ありがとう。本当にありがとう」
私には手を差しのべてくれる人なんていなくて。だから辛かった。
若菜には私と同じような思いをさせたくない。
だから、
私が若菜を支えよう。