幕末異聞―弐―
弐章:吉田稔麿
――どこへ行くんです?
先生こっちを向いてよ。
竹格子が邪魔だ。
この塀も邪魔だ。
そんないっぱい人連れてどこに行くのですか?
俺もお供させてください。
「栄太郎!!よせッ!!!」
「晋作!離せ!先生が行ってしまう!!」
「行くんじゃない栄太郎!!せめて俺たちだけでも…」
「玄瑞…何を……言ってるんだ?」
解らない。
何で二人ともそんな顔をする?
やめろ。
それじゃまるで…
「先生!!松陰先生ッ!!!」
「馬鹿!栄太郎ッ!!」
離せ!!みんな邪魔だっ!
なんで止めるんだ?!
なんで…なんでッ!!
「「「……あ」」」
――ほら見ろ。
松陰先生は俺たちを置いて行ったりしない!
今だってこっちを向いてくれてるじゃないか。
「――――」
え?何て言ったの?
聞こえない。
先生。
――竹格子が邪魔で見えないんだ。
先生の顔が…見えないんだ……