幕末異聞―弐―


「行こう!!歳!」


“大丈夫だ”近藤に笑顔は土方にそう語りかけていた。近藤の言葉を聞いた隊士たちは、地を揺らす雄叫びを一斉に上げる。ある者は、持ってきた“誠”の隊旗を高々と掲げた。


「勝っちゃん…あんたは真の大将だよ」


――自分は今まで何を悩んでいたのだろう?

近藤の一言で完全に吹っ切れた土方は、鬼指揮官としての顔を取り戻した。


「お前ら!よく聞け!!これから隊を二手に分ける!一切の意見は聞き入れねぇ。いいなッ!」

ダンっと足を踏み鳴らし、目の前の隊士たちを威嚇する土方。その顔は正しく、鬼の如き形相である。しかし、今の隊士たちに土方を恐れる者はいない。皆、彼の言葉に奮起し、目をギラつかせる。

これが本当の新撰組の、壬生の狼たちの姿。



――今宵、狼は狩に出かける



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