幕末異聞―弐―
「それがいけないんですよ!」
非の打ち所のない筈の説明に平然と口を尖らせ、不満を言う沖田。
「はぁ?!!」
楓はものすごい剣幕で沖田と向き合う。
「なんでそこでもっと気の利いた嘘が言えないんですか?!貴方がもっとうまく誤魔化してくれてたら私が怒られることは無かったんです!」
自分が正論だと主張するようにビシっと楓を指差す。
「新八〜…」
「…何かな?」
流石に今の空気に新八の顔も引き攣る。
「斬る」
言い終わる前に楓は愛刀を手に持ち立ち上がっていた。
慌てた永倉は楓を必死で押さえに入る。
「待て待て待てッ!!抑えろ楓!あいつ馬鹿なんだよ!ちょっと天然なんだよ!!」
「え〜い離せボケがぁ!!あんたもたたっ斬るぞッ!!?ちょっと顔がいいからって何でも天然で済まされると思うなーーー!!!」
「顔がどうのは言ってねーよ!そりゃお前の私怨だろー!!」
獲れたての魚のようにもがく楓をニコニコと楽しそうに見つめる沖田は正に悪鬼であった。