幕末異聞―弐―
「駕籠か…乗ってみたいな〜」
すぐそばを通り過ぎる駕籠を物欲しそうに目で追う沖田。
「何だ?総司は駕籠に乗ったことがないのか?!」
以外だというように驚いて、近藤も小さくなっていく駕籠を見た。
「乗ったことありませんよ〜!駕籠なんて高くて乗れません」
沖田は、手を拱くように小刻みに振り、微笑する。
「そうか…。よし!では帰ったら俺が駕籠に乗せてやろ「嘘ですよ」
昔から、年の離れた沖田に対して甘い近藤に、横槍を入れたのは永倉であった。
「局長、今の貴方の言葉はおそらく、総司の思惑通りのものです」
沖田をちらっと見て、永倉は眉を八の字に寄せる。
「そ、そうなのか?!」
「あははは!なんですか永倉さん?人聞きの悪い」
困惑する近藤の目と、顔は笑っているが目が笑っていない沖田。二人の視線を同時に受ける永倉は、思わず目を瞑って歩く。
「総司は単にお菓子を買うから万年金欠なわけであって、駕籠に乗ろうと思えば乗れるんです」
「なるほど」
「もう!!永倉さん酷いじゃないですか!!」
(((局長騙そうとしたあんたは酷くないのか?!!)))
膨れっ面で拗ねている沖田に、隊士たちの心の突っ込みが入る。
「まあまあ!とりあえずそれは置いといて。皆はどうなのだ?」