幕末異聞―弐―


「…はぁ…はっ。…これは私の髪か。どうも軽いと思った」


沖田の頭頂部で結われた長くしなやかな髪は、無残にも肩の所でばっさりと切断されていた。黒い塊は、沖田の髪の毛だったのだ。

(まあ…髪なんてどうでもいいや。それより、あと二人をなんとかしなきゃ)

フラフラと体を左右に揺らしながら時間をかけて頭を上げる沖田。しかし、いつまで経っても立ち眩みが納まらない。

(…おかしい)

ここで沖田はようやく自分の体の異変を認めたが、遅すぎた。目の前に立つ吉田は、既に刀を抜いて臨戦態勢に入っている。背後の浪士も構える刀は震えているが、沖田が挑発したせいで、いくらかの覚悟は決まっているようだ。

「ケホッ…ゲホッゲホ…」

既に戦で体力を消耗していた沖田だが、咳が更に彼の体力を奪っていく。

(せめて呼吸が整うまでは…)


絶体絶命の状態で沖田は、どうにか時間を稼ごうと働かない頭で必死に策を考じていた。


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