幕末異聞―弐―
「永倉!!生きてるか!!?」
一階では相変わらず一対多数という状況が続いていた。
近藤の刀も刃先全体が刃毀れし始め、一太刀では止めを刺すことが出来ない。
(クソッ―やはり会津の援軍を待つべきであったか!!)
近藤は、今頃になって軽率だった自分の判断を悔いる。
「局長!!平助が!……平助がやられました!!」
「…藤堂が!!!?」
廊下で戦う永倉からの報告に、近藤は自分への怒りで震えた。
(何故…隊士の尊い命がかかっているというのに何故俺はこんな判断を…)
「うおおぉぉおぉお!!!」
今までとは違う怒りに満ちた近藤の刀に、浪士たちは怯む。
「き…局長?」
その声は廊下にいる永倉と浪士の鼓膜を痛いほど振動させた。
「新八――ッ!!!」
「!!?」
――ドスッ!
近藤の声に気を取られていた永倉に、懐かしい声が響く。
声の方向に目を向けると、刀を交えていた浪士の腹から、ギラギラと鋭く光る切っ先が見えていた。
「遅くなってすまねえ!大丈夫か?!」
浪士を蹴倒して現れたのは槍を持った原田であった。
「………左之助」
「永倉、後は任せろ」
「…斎藤」
「浪士は問答無用で斬り捨てろ!!半分は仲間の救護に当たれッ!」
「…土方さん」
流れ込んでくる血に染まっていない浅葱の羽織を着た男たちに目を奪われていた永倉は肩を掴まれた。