幕末異聞―弐―

「ぎゃぁああぁぁ!!」


「?」

あらぬ方向から聞こえた悲鳴に近藤は我に還る。
暗闇の中で見方同士が間違えて斬り合ったのだろうか?
近藤は逃げた浪士の後を追うように視線を出入り口に移す。


「近藤さん、無事か?」


「……歳」

いつも近くにいるはずなのに、長らく聞いていないような気がする声。
浪士の血を懐紙で拭き取る土方の姿に、近藤の気が緩んだ。

「遅くなってすまねぇ。後は任せてくれ」

部屋に残っていた数人の浪士を意図も簡単に斬っていく土方。

「二階には誰かいるのか?!」

体力の有り余っている土方は、あっという間に敵を畳に沈めてしまった。

「総司がまだ残っている!歳!藤堂君がやられた!!」

近藤は血相を変えて土方に必死の形相で詰め寄る。

「大丈夫だ。今山崎君を呼んだ。負傷者は彼に任せておけば応急処置くらいはできるだろう」

土方は近藤を宥めるようにゆっくりとした口調で話した。


「そ、そうか…そうか…」

山崎が来ると聞いて安心したのか、その場に座り込んでしまった近藤。緊張の糸が一気に切れたのだ。

「近藤さん、あんたはもう休んでくれ。俺は二階の様子を見てくる」

近くにいた土方組の隊士を近藤に数人付け、土方は裏階段から二階へと急いで上っていった。

援軍が来たことで一階の形勢は逆転し、数分と立たない内に新撰組によって鎮圧された。



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