幕末異聞―弐―
「山崎さん!!俺、痛いっす!これが生きてるって事なんですね?!」
「……は?」
「山崎さん!俺も痛い!!ちゃんと感じられるんです!!」
「………え?」
「皆生きてるぞーー!!!」
「「「おおぉおおぉぉ!!俺たちは生きてるんだーー!!」」」
「……」
山崎の言葉に感銘を受けた負傷者たちは突然、拳を上げて彼の周りに集まり始めた。中には目に涙を浮かべている者さえいる。
「山崎教の誕生やな」
「生き神様に手でも合わせておきます?」
押し潰される山崎の姿を遠くから見ていた楓と沖田は、彼を救出するのではなく人集りに向けて合掌した。
「おい!!そこは助ける所やろ二馬鹿―ッ!!」
「あっはははは!たまにはいいじゃないですか!」
「いいぞー!やったれやったれ!!」
集まった者たちに担ぎ上げられる山崎を見て、転げながら爆笑する沖田と楓。
彼らの笑い声に誘われるようにして、悲鳴と血で覆われていた池田屋にようやく東から明かりが入り始めた。
もう時期、長かった夜が明けるのだ。