幕末異聞―弐―
「何が幸せ者や?!!ありえへんよあんなん!うちを見つけるや否や、いきなり怪我した方の腕引っ張って“おお!良さそうですな。がはははッ!”とか言って去ってくんやで?!」
「…そりゃ、少し変わってるな」
外見からは想像できない松本の奇妙な行動に、浅野は目を丸くする。
(でも、松本先生がまだ診察してるってことは、まだ完治してないってことじゃ…)
気づかれないように楓を横目で盗み見る浅野。
ふと手を見ると、片時も手放さない大太刀は左手に握られていた。