幕末異聞―弐―
「へいへいただ今!」
戸を叩く音を聞いた店主が急いで入り口に向かう。
――ガラガラ…
「おいでや……ひぃっ!!」
戸を開けた瞬間、店主は腰を抜かしそうになった。
戸の前には、瓦のように四角い顔をしたいかにも強そうな男が立っていたのだ。
「主人、悪いが御用改めさせていただく」
「へ…へえ…」
店主は男の迫力に肯定の返事しか出来なかった。
「よし!御用改めであるっ!!」
店主の許可を得た近藤は、隊士たちを一斉に店の中に入れ、桂小五郎の捜索に当たらせた。
近藤と沖田は、全ての隊士が店に入ったのを確認し、店主を退け、自分たちは二階へと向かった。
階段を上がった隊士は近藤、沖田を含め四人。
四人は二手に分かれて捜索することにした。
近藤・沖田は奥の部屋から。一番隊伍長と一番隊隊士は手前の部屋から順に探すこととなった。
暗い廊下を忍び足で歩いていく近藤と沖田。前を行く近藤が端の部屋から灯りが漏れているのを確認した。後ろを歩く沖田にその旨を伝え、抜刀の構えをとって襖に近づく。
そして…