幕末異聞―弐―
「では局長、副長、行って参ります」
残された復興作業組を従えた斎藤が姿勢よく会釈をする。
「うむ。頼んだぞ」
近藤は自分も何か役に立ちたいというもどかしさを秘かに抱えつつ、困ったような笑顔で隊士たちを見送る。
(局長という立場をわかってはいる。だが、幕府の一員として戦に携わった者として自分も何かするべきではないか…?)
近藤の中では、近藤勇としての自分と新撰組局長としての自分が葛藤していた。
「近藤さん」
「!」
いつまで経ってもそこから動かない近藤の肩を土方が優しく叩いた。
「あんたがいるべき処にいないと皆が不安がる」
「…」
土方は全て見抜いていた。それでも行かせる訳にはいかなかった。
「荒くれ者集団の長は、あんたにしか勤まらないんだ。近藤勇」
「歳…そうだな。あんな癖の強い奴らを束ねられるのは、俺とお前と山南くらいだな」
「はっ。まったくその通りだ」
照れを隠すように俯く土方の背をトンっと押して、近藤はようやく一歩踏み出した。