素直になれなくて



朝からイライラしているようで、同じクラスの生徒が噂していたぐらい。






「夏美ちゃん、課題できた?」



コツコツと靴の音を立てながら、先生が机に向かってくる。




「ううん。まだ…」



"もう少しで終わるよ"って言おうとしたときー…








バンっと、乾いた音が静かに教室に響いた。






「…」




驚いて目を見開き、机に両手をついた先生を見つめる。









「誰のために、放課後残してまでやってやってると思うの?」


「え…」


目の前には、今まで見たことがない先生の表情。





「宿題忘れたあんたのためでしょ?別に、あんたが頭良ければこんなことしないわよ」


「先生…?」



「バカな生徒を受け持つと、大変だわ」






バカ…?





「さっさとやりなさいよ!もたもたしてると、明日からこの教室から追い出すよ!!」








怒鳴るように言うと、先生はさっきよりも足音を大きく立て教室から出て言った。






一人、教室に残された夏美。









課題のプリントに、たくさんの涙が零れ落ちる。







「やらなきゃ…」






教室を追い出されたくない。


早くやらないと、また怒られる。




怖い。










怖いよー…








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