素直になれなくて






「あ…」


遼平くんが、はっとした表情を見せた。






「…ごめん…言うつもりなかったんだけど…つい…」


戸惑いながら話す遼平くんに、問い掛ける。



「どうして…?」



誰にも言ってないはずなのにー…







「実は、見たんだ」


「?」


「4年のとき、夏美ちゃんがあの先生に怒られてるの」




驚いて目を見開く。




誰も残っていないと思ってたのにー…






「俺、教室に忘れものしてちょうど夏美ちゃんのクラスの前を通ったんだ。その時にー…」



「…」



「しばらくして、夏美ちゃんが走って帰って行ったのも見た」




全部…見られてたんだ。




誰にも知られてほしくなかったのと…逃げ出した自分を見られていたのが、恥ずかしい。






「…本当は…」



「…?」




「あの時に、助けてあげられれば…って」




「え…」



「でも俺、恥ずかしいけど…恐くて出ていけれなかった」


「…」




「ごめん」







真っ直ぐと私を見つめ、軽く苦笑いしながら言った。







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