素直になれなくて
これから一年間の行事、委員決めなど、慌ただしくSHRは進んでいく。
「…同じ駅だったんだね」
「え…」
ボソッと、隣から声が聞こえた。
「朝、遅刻しちゃったんでしょ?」
「あ…うん。乗り遅れちゃって…」
「俺は、間に合ったよ」
「…え?」
間に合ったって…
「俺も、同じ駅から乗ってる」
「…うそ」
今まで、気付かなかったー…
「俺も、今日はたまたま乗り遅れちゃっただけだから、いつも夏美ちゃんと同じ時間の電車だよ」
夏美ちゃんー…
そう呼ばれ、目を見開いて驚く。
「あ…ごめん。馴れ馴れしかった?」
「う…ううん!ちょっと、驚いただけ…」
まさか同じ名前の人に、同じ呼び方されるなんてー…
「ていうか、よく私の名前知ってたね。私なんか…稀田くんのこと、愛里に言われるまで…」
ハッと、慌てて口を抑えた。
稀田くんは、私のこと知ってるのに…私が稀田くんのことを、今まで知らなかったなんて…そんな失礼なことはない。
「あ…その…」
「はは!」
夏美がしどろもどろになっていると、稀田くんが小さく笑った。