素直になれなくて






「大丈夫。俺も、それ見て知ったから」


「それ?」


稀田くんが指をさした方を見ると、そこにはネームプレートが机に貼ってあった。




「あ…」


「ね?だから、気にしないで」



稀田くんは、ふっと笑った。





「…うん」






安心させるような…優しい表情で…









「き…稀田くんは、有名だよね」

「夏美ちゃんは、知らなかったのに?」


「う…」


「はは!ごめん、ごめん。俺なんか、有名じゃないよ」

「そんなこと…だって、カッコいいし…」

「顔だけ?」

「違っ…」

「なんて…冗談だよ。確かに、周りからは色々言われてるかもね」

「…稀田くん」

「ね、稀田くんじゃなくてさ…下の名前で呼んでよ」


「下の名前…」





稀田くんの下の名前ってー…









「良平ってさ」





りょ…う…へいー…









< 56 / 112 >

この作品をシェア

pagetop