素直になれなくて
大きな音を立て電車が到着すると、たくさんの人が乗り降りをする。
「きゃ…」
「夏美ちゃん」
人の波に押され、良平くんと離れてしまった。
降りてきた人たちに流され、どんどん電車から離れていく。
どうしよう…流されていく。
「!」
人混みの中で、誰かが手を引っ張っている。
夏美の手を包み込むような、大きな手。
うまく人混みを避け、電車にどんどん近付いていく。
[電車が発車します…閉まる扉にご注意くださいー…]
アナウンスが流れ、扉が閉まる前に電車に乗れた。