素直になれなくて
電車内は満員。
いちばん最後に乗った夏美たちは、扉に押し付けられている状態。
引っ張ってくれた手は、ずっと繋がれたままー…
一体、この手は誰なんだろうかー…
気になるが、密着しすぎていて顔を上げて確認ができない。
「…」
密着した体から、香水の香りがする。
「いてっ…」
上から小さな悲鳴が聞こえた。
辺りを見渡すと、電車が揺れるたびに人と人がぶつかっている。
でも、夏美には誰もぶつかって来ない。
どうしてかと言うとー…
夏美の手を握っている人物が、覆い被さるように周りから夏美を庇ってくれていた。