素直になれなくて
*5それぞれの時間
「ちょっと!!!夏美」
「ど・・どうしたの、愛里?顔、こわ・・」
「さっき、隣のクラスの子から聞いたけど・・・」
「うん?」
怖い顔をし、愛里の肩がプルプルと震えている。
「稀田くんと毎朝、電車通学してるって本当なの!???」
「あ、うん。同じ駅だから」
「・・・」
愛里の表情が今度は、ポカーンと口を開け一時停止をしている。
「あんたは、どうしてそっち方面に疎いの!!!??」
「いたっ・・・え?」
バシっと頭を叩かれた。
「まぁ、いいわ。で、稀田くんの情報ぐらいは流してくれるんでしょうね」
「え・・あ・・・それ、毎日のように他の子達から聞かれるけど・・特には」
「は!?じゃあ、毎朝なに話してんのよ!?」
「昨日の授業のこととか・・・今日の授業のこととか・・・」
「授業のこと話してて、何が楽しいの!?もっと、稀田くんの恋愛について聞いてきてよ!」
「あれ・・愛里、稀田くんのこと好きだっけ?」
「同じクラスになれば、好きになるよ!だって、あんなにイイ男いないじゃない!?」
「・・あはは」
確かに、みんなが言うとおり稀田くんは綺麗な顔立ちしてて、一緒に登校してるとすれ違った人が振り返っちゃうぐらいの人。
「大丈夫だよ、ただ方向が同じだから一緒に登校してるだけだから。後・・・」
「後?何!?」
「・・なんでもない」
遼平くんとのことがあったから・・・
また他校の男子生徒に絡まれると思って、心配してくれてるだけ。
「稀田くんの情報入ったら、すぐに教えてよ!!」
「はーい」
でも、そのことは愛里に言えなかった。
だって、いつまでも初恋を引きずっているなんて恥ずかしいと思ったから。