素直になれなくて
先輩たちの姿が見えなくなると、遼平はポケットから携帯灰皿を出し、タバコの火を消した。
「りょ…」
「りょーへい!ちょっと!何してんの?」
遼平くんに声を掛けようとしたが、すぐに背を向け集団に戻ってしまった。
「ちょっと、制服でタバコはマズいって前から言ってんじゃん」
「うるせーよ、お前はいちいち」
「何、急に機嫌悪くなってんの?めんどくさー」
「めんどくさいなら、一人で帰れ」
「あ、待ってよー」
そう言いながら、遼平くんたちの集団は階段を下りて行ってしまった。
…さっきの、助けてくれたんだよね?
「…ダメだな、私」
また、お礼が言えなかった。
何度も、何度も…遼平くんには助けてもらってるのにー…
一度もお礼を言ってないなんて、最低だ。
こんな私だから、遼平くんに嫌われて当然だよね。