素直になれなくて








「夏美ー!昨日、先輩に絡まれたんだって?」

「…相変わらず、情報早いね」
愛里の情報網が、少し怖い。

「よく無傷でいられたね」

「あ…うん、りょうへいくんが…」

「稀田くん!?」

「違う…遼平くん」

「りょうへいって…あ、初恋の人の方か!…へぇ~」


さっきとは打って変わって、ニヤニヤし始めた愛里。

「良かったじゃん!覚えてくれてて。助けてくれたってことは、やっぱり夏美のことー…」

「覚えてくれてるのかどうかも、わからないよ。それに、私って最低な人間だから」

「?なに、急に…遼平くんと何かあったの?」

「ないけど…自己嫌悪ちゅう」

「?」

私にとっては、初恋の人だけど…遼平くんにとっては、顔も見たくない女。


夜寝る前にそんなことを考えていたら、全然眠れなかった。


「はぁ…」


「溜め息ついて、何かあったの?」


「!」

「きゃっ、稀田くん!おはよう」

目の前に稀田が現れ、愛里の声のトーンが一つ上がった。

「はよ。…夏美ちゃん、今日は駅にいなかったね。何かあったの?」

ドキ。

「え…あ…」


一睡もできなかったから、いつもより一本早めの電車に乗った。

それにー…



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