素直になれなくて



「夏美、昨日先輩たちに絡まれたんだって」

「愛里っ…」

言おうか悩んでたとこだったのに!


「それ、本当?」

稀田の表情が、さっきよりも険しくなった。

「俺のせいだよね?」

「え!?あ…」

「駅で交際宣言したじゃん?本当は嘘だけど、それが気に入らないらしいよ」

「愛里!」

勝手に言わないでよ!

「ごめん。俺が勝手なこと言ったから」

「う…ううん!大丈夫だったから!でも…朝、一緒に行くのはもう…稀田くんだって勘違いされるのは、嫌でしょ?だから…」

"やめよう"と言いづらくて、語尾がごにゃごにゃとなってしまった。


「…そうだね。本当、ごめんね」

「ううん!こっちこそ、ごめんなさい」

「また何かあったら、言ってね」

そう言うと、稀田は教室から出て行ってしまった。


なんか…悪いことしちゃったかな?
あんなに稀田くん、優しいのにー…


< 82 / 112 >

この作品をシェア

pagetop