素直になれなくて
「夏美、昨日先輩たちに絡まれたんだって」
「愛里っ…」
言おうか悩んでたとこだったのに!
「それ、本当?」
稀田の表情が、さっきよりも険しくなった。
「俺のせいだよね?」
「え!?あ…」
「駅で交際宣言したじゃん?本当は嘘だけど、それが気に入らないらしいよ」
「愛里!」
勝手に言わないでよ!
「ごめん。俺が勝手なこと言ったから」
「う…ううん!大丈夫だったから!でも…朝、一緒に行くのはもう…稀田くんだって勘違いされるのは、嫌でしょ?だから…」
"やめよう"と言いづらくて、語尾がごにゃごにゃとなってしまった。
「…そうだね。本当、ごめんね」
「ううん!こっちこそ、ごめんなさい」
「また何かあったら、言ってね」
そう言うと、稀田は教室から出て行ってしまった。
なんか…悪いことしちゃったかな?
あんなに稀田くん、優しいのにー…