素直になれなくて
さっきまでの眠気が一気に吹き飛び、電車に乗っている間、ずっと落ち着かなかった。
どうしよう、遼平くんに会って謝らなきゃ…
でも自宅謹慎中だから、会える機会がない。
どうしよう…
どうしよう!
悩んでいる時は、あっという間に地元の駅に着いてしまう。
いつもは20分は掛かるのに、まだ数分しか経ってないような気がする。
「…どうしよう」
ブツブツ言いながら下りていると、階段の一番下にいる人物が目に入った。
「…あ」
足が止まったのに、心臓がドクンドクンと速くなったのがわかった。
「どうして、こんなとこに遼平くんが…」
階段の一番下で壁に寄りかかり、携帯をいじっている遼平がいた。
え…どうしよう!
自宅謹慎中じゃなかったの!?
さっきまで、会えないことに悩んでたはずなのに!!
いざ目の前にいると、今度はどうしたらいいのかわからない!!
「はぁ…っ」
緊張からか、息苦しい。
でも、この機会を逃したらもう謝ることも…今までのお礼を言えることもないかもしれない。
言わなきゃ…
「すぅ…」
深く息を吸い…
「遼平…くん!」
声と一緒に、吸った空気を吐いた。