素直になれなくて
「何のこと?」
「昨日のことで、遼平くんが謹慎になったって、さっき駅で聞いて…」
「誰に?」
「遼平くんといつも一緒にいる人達が、喋ってるのを聞いてー…」
「あいつら…」
「本当に、ごめんなさい」
もう一度、深く頭を下げた。
「後…あ…」
"ありがとう"
「別に、あんたのせいじゃないよ。だから、謝られても困る」
と、言おうとしたのに…遼平から返ってきた言葉は素っ気なく、冷たかった。
「でも…」
「たまたまタバコを吸ってた場所に、あんたが居ただけ。謹慎になった理由は、他にも色々あるからな」
「でもっ…」
「だから、あんたには関係ない」
ドクン!
関係ない…
「そういうことだから」
最後の言葉は、さっきよりももっと冷たく…突き放されたように感じた。
「…わかった…ごめんね」
顔を上げ、遼平の顔を見ないようにその場から逃げるように走った。
「はぁ…はぁ…」
顔を見なくても、声だけでわかった。
冷たく、突き放すような声ー…
「ふっ…」
昔とは違う、低くて身体に響くような声。
優しかった遼平くんと同一人物とは、考えられないー
「またっ…言えなかったな…」
伝えたいことを、言えば良かった。
「愛里の言う通りだ…」
後悔しても、もう遅い。
私たちは、違う時間を過ごしてきた。
2年という時間が、こんなに人を変えてしまうとは、思ってもみなかった。
過去の出来事は、過去でしかない。
私たちの時間は、進んでいたんだー…