人こそ芸術 part1
他にも僕が手術を行った患者の病室を覗く。
どの患者も順調に回復しているようだった。
僕はオフィスに戻る。
窓辺にあるデスクの椅子に手を伸ばすと同時にノックがした。
「どうぞ」
振り返り扉に向かって許可を出し、椅子に座った。
入って来たのは看護婦の小山るう(コヤマルウ)だった。
「失礼します」
小山るうは薄ピンクのトレーを持っていた。
珈琲の香ばしい香りがオフィスに広がる。
「美味しい珈琲を見つけたんです。先生にも飲んでもらいたくて」
小山るうは大きな目を細めて微笑む。
「ありがとう。いい香りだね」
珈琲を受け取り、一口啜る。
少々甘いが、確かに美味い。
「美味しいよ」
僕は優しく微笑む。
「よかったです。・・・これ私の手作りなんですけど、よかったら食べてください」
白い皿にはチョコチップの目立つクッキーが載っていた。
甘い物はあまり得意ではないが、有り難く受け取った。
嬉しそうにする小山るうを見ていると、僕まで嬉しくなる。
小山るうは腰までストレートの髪が伸びている。
歩く度に揺れる髪はとても美しい。