人こそ芸術 part1
-7人目-
僕の地下室
この地下室は剥き出しの白いコンクリートで壁、床、天井が覆われている。
この冷たい地下室の幾つかあるうちの一つ、その部屋の扉を開ける。
そこには1人の女が恐怖に怯え、部屋の隅で膝を抱いている。
僕の存在に気付いたのか女は顔を上げた。
「話す気になりましたか?」
2日ほど前にココに連れて来て以来、女は食べ物を口にしていない。
水さえも・・・その所為か女は力無く首を横に振った。
「困りましたね。名前を教えてくれれば食事を与えると言っているのに・・・」
女は僕をじっと見詰めている。
「話す気が無いなら今夜も食事は抜きですね」
そう言って僕は女に背を向ける。
「待って・・・」
僕を呼び止める声は、耳を澄まさないと聞き逃してしまうほど、小さなものだった。
「どうしました?話す気になりましたか?」
僕は出来るだけ優しく微笑んだ。
「私の名前は森岡静菜(モリオカシズナ)・・・」
僕は黙って頷く。
「よくできました」
僕は食事の準備の為、地下室を出た。