人こそ芸術 part1
僕の患者
3日後、出勤前に病院から電話がかかってきた。
大急ぎで病院へ向かう。
走って病院に飛び込んだ僕を待っていたのは栞だった。
「あっ目黒先生!!」
周りには他の看護婦たちが居た。
「大橋美鈴さんが居なくなったって本当ですか!?」
「昨夜は確かにベッドに寝ていたんですけど・・・。それで早朝、病院に大橋さんから電話があったんです」
「何て!?」
「それがですね・・・別の病院に行くから探さないでくれって言われたんです」
「わかった。とりあえず僕は大橋さんに連絡してみます」
僕は階段を駆け上がりオフィスへと向かった。
勢い良く扉を開け、閉めるのも忘れてデスクの隅に置いてある電話に手を伸ばす。
受話器を握り、大橋美鈴の書類を見ながら自宅の番号を打つ。
廊下から栞が心配した顔で此方を見ているのが視界に入る。
「もしもし、大橋美鈴さんですね?・・・えっ?・・・いや、このままウチで治療を続けて・・・だからっ・・・はい、はい・・・判りました」
僕は受話器を静かに戻した。