人こそ芸術 part1

どうやら林田真矢は心筋症の虞(おそれ)がある。

「心臓の方に異常があると思われるので、詳しい検査をしたいと思います」

林田真矢にはこのまま入院してもらう事になった。

病院の都合上、診察は来週に行い、その結果次第で入院を続けてもらう。



林田真矢の背中を見送ると、僕は立ち上がり大きく背伸びをした。

「目黒先生、お疲れ様でした」

櫻井舞はニッコリ笑う。

「櫻井さんもお疲れ様」

僕は優しく微笑む。

「明日は何か予定でもあるんですか?」

明日は日曜日。

僕の休日。

月曜日は病院が休診なので、僕は連休なのだ。

「最近は忙しかったから家でゆっくりするよ。櫻井さんは?」

今度は僕が聞く。

「私は・・・」

櫻井舞は人差し指を顎に付け、しばらく考える仕草を見せる。

「予定はないです」

苦笑いをした。



僕は支度を済ませ、すっかり暗くなった夜空の下、愛車を走らせ自宅へと向かう。



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