人こそ芸術 part1

僕が取り出した一冊。

これは主人公の男が性欲を満たす為に地下室に女を監禁する物語。

男は拉致した女を“コレクション”と呼んでいる。

僕は性欲の為に女を監禁しているわけではないが、この男に親近感が湧き、この小説は僕のお気に入りの一冊である。

僕はその小説を手に、先程座っていた椅子に座り直す。

ぬるくなった珈琲を啜りながら小説を読み始める。



いつ頃から読み始めたか判らないが、気が付くとお昼をとっくに過ぎていた。

おやつの時間の方が近い。

小説にしおりを挟み本棚に戻す。

遅い昼食をとって、散歩に出掛けることにした。

これは日曜日の習慣。

今日みたいに夕方近くに散歩に出掛けることも多々ある。



外に出て空を見上げる。

遠くの空は淡いオレンジ色に変わっていた。

履き慣れた白い運動靴で歩き出す。

僕が散歩を習慣付けているのは、運動不足になりがちなので健康の為と、美しい女を探す為。





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