人こそ芸術 part1
コレクションを眺めているうちに、シャンパンのボトルは空になっていた。
華奢なグラスの底に残った僅かな黄金の液体を口に流し込む。
炭酸がシュワシュワと喉をくすぐる。
空になったボトルと華奢なグラスを器用に片手で持つ。
部屋を出る為に立ち上がり、扉に向かう。
壁に付いたスイッチを空いた方の手で押し、電気を消す。
L字型の取っ手に手を掛け、僕は真っ暗になった部屋から出た。
地上に続く階段に向かう途中、硝子張りの部屋を横目で窺う。
大橋美鈴と目が合った。
大橋美鈴は白いタイルの床に置かれた食事を指差して、何かを訴えている。
僕は歩き出し、硝子張りの部屋の扉を開けた。
「どうかしました?」
部屋を覗く様に扉の隙間から顔だけ出した。
「温かいご飯が食べたいの」
確かにこの食事は冷め切っていて、多分美味しくはないだろう。
「判りました。直ぐに持ってきますね」
僕は微笑むと、床に置いてある食事のトレーを持って地下室を出た。
頭の中で献立を考えながら階段を一段一段上がって行く。