人こそ芸術 part1
ケーキを食べながら、今後の林田真矢の治療法について考える。
まず拘束型心筋症とは、心臓が硬くなって収縮力は問題無いが、拡張力が低下し、血液が心臓に流れにくくなる。
その為肺などに血液が滞り、全身へ送られにくくなる、原因不明の恐ろしい病気なのだ。
治療法は薬物治療が中心。
だが効果が得られない場合、手術で切除したり、ペースメーカーを用いたり、心臓移植がある。
治療法が幾つもある場合は、患者に選択肢を与える。
医師としては、中心となっている薬物治療をすすめるが、切除と言うならその治療を行う。
白い壁や床に覆われた林田真矢の病室を訪ねる。
まず検査結果を知らせなければ。
「目黒先生、心臓が悪いんですか?」
林田真矢は深刻な表情で僕を見つめる。
「検査の結果、林田さんは拘束型心筋症だと判明しました」
僕は林田真矢の目を逸らさずに話を続けた。