人こそ芸術 part1
僕の患者
午後になり、林田真矢の検査が行われた。
薬物治療を行ってから既に4日が経っている。
もう息苦しさや息切れなどの症状が和らいでもいい頃なのだが、全くと言っていい程効果が得られない。
思っていたより進行が進んでいたのか、薬物治療では進行を止めることが出来なかったようだ。
「助かる方法はまだありますよね?」
検査を終えベッドで横になっている林田真矢は、僕の白衣の袖を掴みながら言った。
「はい。僕が必ず林田さんを助けます」
林田真矢の目をしっかり見て言う。
この日の夜、会議が開かれた。
検査の結果、予想以上に進行が早い為、急遽明日、手術を行う事になった。
手術方法は硬くなってしまった心臓の筋肉を除去する手術。
今回の介助医も櫻井舞。
少し気まずい。
だが仕事だ。
仕方ない。
答えは既に決まっている。
勿論『NO』だ。
ただその答えはこの先の事を含め、僕にとって意味のある選択になるのだろうか。
その答えをいつ伝えるべきか悩む。