人こそ芸術 part1

更衣室の扉の前に栞の姿があった。

僕は辺りを見回し、誰も居ないことを確認する。

「どうした?」

栞は険しい顔をしていた。

「目黒先生、院長がお呼びです」

急に敬語になったのは僕の後ろの方に櫻井舞が歩いていたため。

「あ、櫻井さん。お疲れ様」

「お疲れ様でした」

頭を下げ、女性用更衣室に入っていった。

「10分で向かうと伝えてください」

栞と別れ、僕は男性用更衣室に入った。

青い手術着をゴミ箱に入れ、真っ白な白衣に袖を通す。

更衣室の扉をノックする音が聞こえて反射的に背後を振り返る。

「よぉ」

笑顔で入ってきたのは白衣姿の大川大輔だった。

「おぉ、何か用か?」

笑顔が困った表情に変わる。

「今日小山ちゃん、無断欠勤なんだ」

「小山ちゃん!?」

「小山るう。・・・何か知らない?」

「さぁ・・・僕は何も」

困ったフリをする。

「そうだよなぁ」

大川大輔は苦笑いをした。

「あ、院長に呼び出しくらってるんだった」

「あぁ、わりぃ」

更衣室を出て大急ぎで院長室に向かう。



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