人こそ芸術 part1
僕のオフィス
オフィスに戻ると栞が心配した顔で扉の前に立っていた。
「お母さん何だって?」
「小山さんの無断欠勤のこと」
「それだけ?」
「僕らの関係も聞かれた」
「やっぱり・・・」
栞は俯いてしまった。
「大丈夫だよ」
僕は優しく微笑む。
栞の母親が僕らの関係を嗅ぎ付けたのは最近ではない。
付き合い始めた頃から、院長室に呼ばれては問い詰められた。
別に同僚の女性に口裏を合わせてもらって、彼女のフリをしてもらえばいいのだが、栞に反対されたので僕には彼女がいない事になっている。
だから度々、告白を受ける事があるのだ。
栞がモテないわけではない。
栞は病院側の誰もが知っているように、院長の娘。
誰も手を出さない。
だから栞が告白されるのは、若い患者やその見舞いに来る若い男。