人こそ芸術 part1
確か、ここに招待した日、小山るうは泥酔状態だった。
そんなになるほど飲むのだから、相当の酒好きなのだろう。
仕方ない。
空きっ腹にアルコールは良くないが、この缶ビールが小山るうにとって最後の酒になる。
僕は硝子張りの扉の白い扉を開けた。
「目黒せんせぇ、昨日来てくれなかったから寂しかったぁ」
甘ったるい声を出して、小山るうは体をクネクネしながら僕に近付いて来た。
やはり脱出を諦めていないようだ。
「コレあげます」
優しく微笑み、汗の垂れる缶ビールを差し出した。
「ありがと」
首を傾げ、ニッコリと笑う。
「それじゃぁ、僕は用事があるので」
僕は小山るうに背を向け来た道を戻る。
「行っちゃやだぁ・・・」
服の裾を掴まれた。
僕は振り返る。
「一緒に飲も?」
「いいですよ」
展示室に行くのは、また今度にしよう。
僕らは部屋の中央、鎖と床の結合部分を囲む様に腰を下ろした。