人こそ芸術 part1
-10人目-
僕のオフィス
二週間前に買った三種類の熱帯魚たちは、僕の水槽の暮らしに慣れたのか毎日楽しそうに泳ぎ回っている。
今日は栞が体調不良で仕事を休んでいた。
本当は仕事が終わってから見舞いに行きたいのだが、栞は母親と暮らしているので、顔すら見ることが出来ない。
あとで電話でもしよう。
今日は真っ直ぐ家に帰り、僕の作品たちを眺めながらビールでも飲もう。
小山るうを僕の作品にしてからお祝いをしていない。
だから今日の予定はこれで決まり。
そろそろ帰るか・・・。
そう思って背後にある扉へ体を向けると、大きな音を立てて扉が開いた。
「ちょっと!!ビッグニュース!!」
「うゎっ!?」
いきなりオフィスに飛び込んできたのは、体調不良を理由に休んでいた栞だった。
「修っビッグニュースだってば!!」
興奮状態の栞は僕に詰め寄る。
おかげで僕はデスクに腰をぶつけてしまった。
「わっ判ったから栞、落ち着いて」
栞を僕から離し、反っていた腰を元に戻す。
栞は深呼吸をして僕を見上げた。
「赤ちゃんできた」
その言葉に僕の腰をさすっていた手が止まる。