人こそ芸術 part1
櫻井舞を女としてではなく、コレクションとして僕のモノにしたかった。
櫻井舞は美しいのだ。
コレクションにする価値は充分ある。
でも僕はそうしなかった。
櫻井舞は美しいからこそ、このまま生きて今以上に美しくなって幸せになってほしい。
僕の手で大川大輔の恋が終わってしまうなんて、そんなことしたくない。
それもコレクションにしない理由のひとつだ。
日が落ちて、少し冷たい風が吹く。
手すりの向こう側は僕の心によく似たブルーだった。
悪い事をした訳ではないが、女性を泣かせてしまうのは気分が良くない。
白衣のポケットに入った携帯を取り出して、栞に電話をする。
「やっぱり櫻井さん、泣いちゃった・・・」
「恋愛したらフられる事もあるんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
栞が小さく笑ったのが聞こえた。