人こそ芸術 part1
僕の戦い
妊娠が発覚して丁度一週間後の今日、火曜日。
内田院長は出張から帰ってきている。
僕と栞は横に並んで院長室の前に立つ。
「不安だなぁ・・・」
ポツリと栞は弱音を吐く。
「大丈夫だよ。きっと上手くいく」
僕自信に言い聞かせる様に言う。
栞の左手を握ると、強く握り返してくれた。
内田院長は僕のことを『栞にたかる蠅』だと思っているに違いない。
そしてそんな蠅が栞を嫁にくれと言うのだ。
結婚を許してはくれないだろう。
だけと引き下がったりなどしない。
僕は土下座だって、栞を誘拐だってする覚悟がある。
僕の残りの人生を、栞とこれから生まれてくる子供と3人で居たいんだ。
「開けるよ?」
栞は静かに頷く。
震える手で扉をノックする。
『どうぞ』
「失礼します」
ゴクリと唾を飲み込み、扉を押し開け、院長室に入った。
これから栞を賭けた内田院長と僕の戦いが始まる。