人こそ芸術 part1

僕の戦い


妊娠が発覚して丁度一週間後の今日、火曜日。

内田院長は出張から帰ってきている。

僕と栞は横に並んで院長室の前に立つ。

「不安だなぁ・・・」

ポツリと栞は弱音を吐く。

「大丈夫だよ。きっと上手くいく」

僕自信に言い聞かせる様に言う。

栞の左手を握ると、強く握り返してくれた。

内田院長は僕のことを『栞にたかる蠅』だと思っているに違いない。

そしてそんな蠅が栞を嫁にくれと言うのだ。

結婚を許してはくれないだろう。

だけと引き下がったりなどしない。

僕は土下座だって、栞を誘拐だってする覚悟がある。

僕の残りの人生を、栞とこれから生まれてくる子供と3人で居たいんだ。

「開けるよ?」

栞は静かに頷く。

震える手で扉をノックする。

『どうぞ』

「失礼します」

ゴクリと唾を飲み込み、扉を押し開け、院長室に入った。

これから栞を賭けた内田院長と僕の戦いが始まる。

< 82 / 97 >

この作品をシェア

pagetop