人こそ芸術 part1

「あぁ・・・平和だなぁ」

大川大輔が目尻に付いた涙を乱暴に拭きながら言った。

「平和?」

不思議な言葉のチョイスに聞いてみる。

「そう、平和。幸せとか嬉しいとかをひっくるめて平和だなぁって」

大川大輔は目を細め、今度は櫻井舞の腰を抱き寄せた。

櫻井舞は呆れた顔で見上げていたが、その顔は幸せそうに見えた。

「なるほどね。それで平和か」

僕は誰にともなく頷いた。

平和とは何だろうか。

大川大輔が言っている事は勿論、平和だろう。

だが平和は人によって感じ方が違うし、それがどれだけ大きなモノかも人それぞれだ。

平和、これを一言で言うなら戦争・核の無い世界。

でもそれは世界が望む平和であり、一人一人が想い描く平和とは異なる。

平和に正しい答えなど無いということだ。

僕の平和は、栞にも世間にもバレずに僕が死ぬまでコレクションを続けれること。

それが僕の平和。

10人目、僕の作品となりコレクションに加わるのは栞だ。

・・・・・・僕は平和を望む。


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