ヒメゴト
「そのくらい、遥を愛してたんだよ、千秋は。」
そう言った結城くんの目は、悲しそうだった。
「高校に入って、初めて小澤さんを見た時……息が止まるかと思った。」
結城くんは、写真の中の遥さんにそっと触れた。
「千秋はきっと、小澤さんと遥を重ねてる。」
「え?」
「だから……こんなに小澤さんを求めてる。」
今、会長との全ての出来事が繋がった気がした。
突然のキスに……悲しそうなあの目。
今なら、すべて理由が分かる。
「いつか…こうなるって分かってたのにな。」
結城くんは、そっと立ち上がると、窓際で窓の外を眺め出した。
「いつか小澤さんに知られる日が来るって…分かってた。だから千秋とは、近づかないで欲しかった。」
「そう、だったんだ。」
会長は、わたしと遥さんを…。
胸がキュッと締め付けられるような感覚がした。
なんか……泣きそうだ。