ヒメゴト
「ゆき、あんた泣いてる、の?」
「…っ。」
美月の言葉に、必死に溢れる涙を堪えようとしたけど…もう、止まらないんだ。
美月はわたしの頭を撫でる。そして、わたしをそっと抱きしめるから、無意識のうちに、わたしは美月の背中に手を回した。
わたしより、10㎝も背が小さく、華奢なはずの美月の背中が、今日はすごく大きく感じた。
ポツリ、美月が口を開く。
「あいつに、何かされた?」
美月の言う"あいつ"は、きっと会長のこと。
わたしは、美月の腕の中で、首を左右に振った。
「ちが、う。」
そう否定した声も、なんだか震えていた。
違う…でも、あながち違くないかもしれない。