猫になって君にキスをして
「兄ちゃん、もう1杯どうだい」
真治の返事も待たず、店主はカウンターに生中をドンっと置いた。
「あ、どうも」
「いやいや。何杯でも飲んでいってくれ」
「どうも」
ポリポリと頭を掻く真治。
「あれ? オレ、何で泣いてたんだっけな」
そう言いながらジョッキを口元に運ぶ。
「にゃ!」
(待て!)
オレは真治の「愛は勝つTシャツ」に手をかけた。
「ん? なんだ、猫」
「にゃにゃ」
(少しくれ)
ジョッキを肉球で差す。
「これか? 飲むのか?」
「にゃ!」(飲む!)
「少しだぞ」
「にゃー」(サンキュー)
オレは真治の差し出すジョッキに顔を寄せた。
鼻に泡がまとわりついた。
「にゃー」(サイコー)
顔を突っこみ、舐めれるだけ舐めた。
「にゃ」(ごち)
「美味いか?」
「にゃ」(んまい)
真治はそんなオレをしげしげと眺めてから、猫毛の浮かんだビールを飲み干した。