猫になって君にキスをして
その後、オレと真治は交互にビールを飲んだ。
オレが先に舐め、真治が猫毛の浮いたビールを飲み干した。
酔っ払った。
いい感じの酔いだった。
このままでは完全に出来上がってしまう。
そうなる前にとりあえず紗希のところへ向かわないと。
オレは赤い顔をした真治の頬を肉球でひと撫でし、カウンターから飛び降りた。
やや足元がフラついている。
「帰るのか?」
「にゃ」
「また来いよ。飲ましてやる」
「にゃ」
今度は人間の姿でお前と飲みてーよ。
そしてもう1回ラーメンを鼻から出してくれ。
できるなら、それを紗希に見せてやってくれ。
オレは左手を上げ、真治に手を振った。
そして再び赤レンガを歩き始めた。
鼻先を撫でる冷たい風が、気持ち良かった。