猫になって君にキスをして
改札を抜ける人に紛れて、そこを通り抜けようとした時だった。
いきなりぎゅっとしっぽを掴まれた。
「にゃ!」(いでっ!)
振り返ると、ニカリと笑う婆さんがいる。
「また会ったな」
まぶしい。
金歯が光っている。
……なんだよ!
煮物の婆さんじゃねーか!
「にゃにゃ!」
(どーしたんだよ、婆さん!)
「お前、電車に乗るつもりか?」
「にゃにゃにゃ」
(それより煮物つくりに帰ったんじゃなかったのか、婆さん)
「変な猫だのぅ。どこさ行くんだ?」
「にゃにゃ……」
(煮物は……)
「婆ちゃんと一緒に乗っか?」
「にゃ……」
(てか、婆さんこそ、どこ行くんだよ)
「どれ、んじゃ行ぐが?」
「にゃにゃ…」
(……ん?)