猫になって君にキスをして

「にゃ?」
(いったい、どこに行くんだ?)


……と思った時だった。

背中に感じていた地面の感触が、いきなり下へガツンとさがった。

と思ったら、またさがった。

と思ったら、また……


って、すげー痛いんですけど!


階段か!


「にゃー!」
(婆さん、痛てーよ!)


衝撃に耐えきれなくなったオレは、にゃにゃにゃっと紙袋の中でもがけるだけもがき、
なんとかそこから脱出した。


「これこれ、猫」


これこれ、じゃねーよっ。


オレは急いで階段を下りきったのだが……、

腰の曲がった婆さんの事が、妙に気にかかる。


「よっこらせ」


掛け声と共に、ゆっくりと降りてくる小柄な姿。

オレは仕方なく、その場でしばらく婆さんを待つことにした。


「ふう……歳をとると、しんどいのぅ」


やっとのことで下までたどり着いた婆さんの手が空中を舞っている。


「にゃ!」(やばい!)


また杖代わりにされちまう。

慌てたオレは急いで婆さんから離れた。

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