猫になって君にキスをして
ゴオーン……
電車がホームに滑り込んできた。
「にゃ」(うるせぇ)
ものすごい音だ。
ガゴっと扉が開く。
オレは、列車とホームの隙間をピョンと飛び越え、先に電車に乗り込んだ。
この隙間に婆さんが落ちたりしないかと不安になったが、
意外にも、婆さんは易々と乗り込んできた。
電車に乗ることには慣れているのかもしれない。
むしろ猫になったオレのほうが、若干恐怖を感じている。
電車が恐いと思ったことなど初めてだ。
足から伝わる振動も、耳に入る金属音も、髭と身体を撫でる変な風向きも、全てが初体験だ。